Japanische Klassiker mit Furigana
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かしょく
花燭
Lesen Sie 花燭 (かしょく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.501 Zeichen · 38 Bildschirme
陰惨な気がするだけであった。殊にもこの髭男の場面は、ひどいと思った。人間侮辱、という言葉さえ思い出された。そのうちに監督に名案が浮んだのである。めし食う男の髭の先に、めしつぶを附着させたら、というのであった。それは、名案ということになった。髭の男に扮している立派な役者は、わかいお弟子の差し出す鏡に向い、その髭の先にめしつぶをくっつけようとあせるのだが、めしつぶは冷え切っていて粘着力を失っているので、なかなか附かない。みんな、困った。はりきりの監督助手は、そのときすすみ出て、
「それはね、もう一粒のごはんつぶをすりつぶし、それを糊にして、もう一粒のごはんつぶに塗ってつけたらいいでしょう。」
男爵は、あまりのばからしさに、からだがだるくなった。ふっと眼がしらが熱くなり、理由はわからぬが、泣きたくなった。わあ、と大声あげて叫び出したい思いなのである。けれども、立ち去るわけにいかない。それは、失礼である。なるほど、と感心した振りをして厳粛にうなずき、なおも見つづけていなければならぬのである。
その撮影が、どうにか一くぎりすんで、男爵は、蘇生の思いであった。