Japanische Klassiker mit Furigana
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かしょく
花燭
Lesen Sie 花燭 (かしょく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.501 Zeichen · 38 Bildschirme
むし熱い撮影室から転げるようにして出て、ほっと長大息した。とっぷり日が暮れて、星が鈍く光っている。
「新やん。」うしろから、低くそう呼ばれて、ふりむくと、いままで髭の男のお給仕をしていて二十回以上も、まあ、とあきれていたあの小柄な令嬢の笑顔が暗闇の中に黄色く浮んでいた。「新やん。ちっともお変りにならないのね。あたし、さっき、ひとめ見て、ちゃんとわかったわ。でも、撮影中でしょう、だもんだから、だまって、ごめんなさいね。」ひと息で言ってしまって、それから急に固くなり、「ほんとうに、おひさしぶりでございました。お国では、皆様おかわりございませぬでしょうか。」
男爵は、やっと思い出した。
「あ、とみ、とみだね。」田舎の訛が少し出たほど、それほど男爵は、あわてていた。十年まえ、とみは、田舎の男爵の家で女中をしていた。かれが高等学校にはいったばかりのころで、暑中休暇に帰省してみたら、痩せて小さく、髪がちぢれて、眼のきびしい十六七の小間使いがいて、これが、かれの身のまわりを余りに親切に世話したがるので、男爵は、かえってうるさく、いやらしいことに思い、ことごとに意地悪く虐待した。