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Japanische Klassiker mit Furigana

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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Lesen Sie 菊千代抄 (きくちよしょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.178 Zeichen · 72 Bildschirme

Aozora Bunko

菊千代は七歳のとき、江戸城へあがって将軍にめみえをした。将軍は痩せた蒼白い人で、なにか云って短刀を呉れた。まわりには大勢の人がいたこと、天床がばかげて高かったことなどを覚えている。そのほかのことは霞に包まれたようで、なにも思いだすことができない。……その年に妹が生れた。鶴子という名で、生母はのちに滋松院といわれた側室である。この側室は鶴子の下にも二人女子を生んだ。

菊千代が十三歳のとき母が亡くなった。

上屋敷からの急使で、菊千代はいま臨終というところへいった。二年ほどまえから病臥していて、たびたびみまいにも来たが、母の態度はいつも冷淡だったし、こちらも愛着がなく、形式的な挨拶をしては帰ったのであるが、臨終のときの印象は忘れることができない。……母はきみの悪いほど蒼ざめたむくんだような顔で、苦しそうに喘ぎ、菊千代を見ると、眸子の濁った眼をみひらき、こちらへ手をさし伸ばした。

「どうしたのだ、握ってあげないのか」

側にいた父からせきたてられたので、菊千代はきみの悪いのをがまんして、その手をおそるおそる握った。すると母はぞっとするほどの力でこちらの指を掴み、もっと大きく眼をみはって、ぜいぜいした声で云った。