Japanische Klassiker mit Furigana
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もえぎいろのくき
萌黄色の茎
田中 貢太郎
Lesen Sie 萌黄色の茎 (もえぎいろのくき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.481 Zeichen · 9 Bildschirme
この月になって雨が降りだした比から来はじめた客は、魚のフライを注文して淋しそうにビールを飲んだ。
「ここはおもしろい家だね、これからやって来るよ」
と、客が心持好さそうに云うので、
「どうぞ、奥さんに好くお願いして、いらしてくださいまし」
と笑うと、
「私には、その奥さんが無いのだ、可哀そうじゃないか」
客は金の指輪の見える手でビールのコップを持ちながら笑った。
「御冗談ばっかし」
「冗談じゃないよ、ほんとだよ、先月亡くなったのだよ、だからこうして飲みに来るのじゃないか」
その云い方がしんみりして嘘のようでないから涙ぐましい気もちになった。
「ほんと」
「ほんととも、だから可愛がってくれないといけないよ」
「お気のどくですわ、ね、え」
「お気の毒でございますとも」
客は淋しそうに笑って飲んでしまったコップをくれた。
「一ぱいさそう、おなじみになるしるしだ」
「そう、では、ちょっと戴きます」
「ちょっとはだめだよ、多く飲まないと忘れてしるしにならないよ」
客はビール壜を持ってなみなみと酌をしてくれた。
「では、どっさり戴きます」
その客は北村さんと云う客であった。
「すぐこのお近くでございますの」