Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もえぎいろのくき

萌黄色の茎

田中 貢太郎

Lesen Sie 萌黄色の茎 (もえぎいろのくき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.481 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

「すぐそこだよ、先月越して来たばかしなんだ、深川の方にいてね」

「大変遠方からいらっしゃいましたね」

「そうだ、深川の方で工場をやってたが、厭になったからね、家に使ってる奴に譲ってしまったのだよ」

もしかすると奥さんが亡くなったので、それで何をするのも厭になってこの山の手に引込んだのじゃないかと思った。

「人を使ってやる仕事はうるさいものでね、金にかかわらないよ」

「そうでございましょうね」

なんの工場であったか知りたかったので、

「なんの工場でございます」

「つまらん工場さ、針工場だよ」

針工場の意味が判らなかった。

「針工場って、どんなことをする工場……」

「メリヤスを織る針だよ」

他に何人も客がなくてそれでお幸ちゃんが出前をもって往ったことがあった。北村さんの右の手はこっちの左の手首に絡まっていた。

「お前さんはどこだね」

「私、愛知県よ」

「では、名古屋かね」

「名古屋の在ですよ」

「兄弟があるかね」

「ええ、兄が二人と、妹が一人あるのですよ、お百姓よ」

「お前さん、どこかへお嫁にでも往く約束があるの」

「そんな処ありませんわ」

「ないことはなかろう、お前さんのような好い女を、そのままにはしておかないよ」