Japanische Klassiker mit Furigana
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おちばのとなり
落葉の隣り
山本 周五郎
Lesen Sie 落葉の隣り (おちばのとなり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.877 Zeichen · 57 Bildschirme
繁次は兄弟子にすすめられて、端唄の稽古を始めたが、どうしてもうまくならないし、声が悪いので「落葉に雨の」というのを半分やりかけたままよしてしまった。或る夜、また河岸の居酒屋へいったとき、少し酔ったのだろう、自分でも気づかないうちに、その唄をうたいだした。――参吉があまり来なくなってからだから、二十の年の冬のかかりだったろうか、雨が降っていて客もあまりなく、彼はいつもの隅に腰を掛けて、おつぎの酌で飲んでいた。飲むといっても、おつぎに助けてもらってせいぜい一本というところだし、それもたいてい三分の一は残るのが例であった。その晩もよけいに飲んだわけではないが、珍しく客が少ないのと、気のめいるような雨の音とで、なんとなくそんな気分になったのだろう、稽古したところだけを低い声で、そっとうたった。
「あら、いいわね」とおつぎが云った、「粋な文句じゃないの、あとをうたってよ」
「よせよ恥ずかしい」繁次は赤くなった、「われながらこの声にはうんざりしているんだ」
「あんたのおはこだよ、それ」とおつぎが云った、「なにかっていうと自分を貶すんだ、よくない癖だよ、繁さん、あんたはいい人だけれど、それだけは直さなくちゃいけないよ」