Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
編集室は奥の二階で、十畳の一室、西と南とが塞がっているので、陰気なことおびただしい。編集員の机が五脚ほど並べられてあるが、かれの机はその最も壁に近い暗いところで、雨の降る日などは、ランプがほしいくらいである。それに、電話がすぐそばにあるので、間断なしに鳴ってくる電鈴が実に煩い。先生、お茶の水から外濠線に乗り換えて錦町三丁目の角まで来ておりると、楽しかった空想はすっかり覚めてしまったような侘しい気がして、編集長とその陰気な机とがすぐ眼に浮かぶ。今日も一日苦しまなければならぬかナアと思う。生活というものはつらいものだとすぐあとを続ける。と、この世も何もないような厭な気になって、街道の塵埃が黄いろく眼の前に舞う。校正の穴埋めの厭なこと、雑誌の編集の無意味なることがありありと頭に浮かんでくる。ほとんど留め度がない。そればかりならまだいいが、半ば覚めてまだ覚め切らない電車の美しい影が、その侘しい黄いろい塵埃の間におぼつかなく見えて、それがなんだかこう自分の唯一の楽しみを破壊してしまうように思われるので、いよいよつらい。
編集長がまた皮肉な男で、人を冷やかすことをなんとも思わぬ。