Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
その美しい姿に魂を打ち込んでしまった。
水道橋、飯田町、乗客はいよいよ多い。牛込に来ると、ほとんど車台の外に押し出されそうになった。かれは真鍮の棒につかまって、しかも眼を令嬢の姿から離さず、うっとりとしてみずからわれを忘れるというふうであったが、市谷に来た時、また五、六の乗客があったので、押しつけて押しかえしてはいるけれど、ややともすると、身が車外に突き出されそうになる。電線のうなりが遠くから聞こえてきて、なんとなくあたりが騒々しい。ピイと発車の笛が鳴って、車台が一、二間ほど出て、急にまたその速力が早められた時、どうした機会か少なくとも横にいた乗客の二、三が中心を失って倒れかかってきたためでもあろうが、令嬢の美にうっとりとしていたかれの手が真鍮の棒から離れたと同時に、その大きな体はみごとにとんぼがえりを打って、なんのことはない大きな毬のように、ころころと線路の上に転がり落ちた。危ないと車掌が絶叫したのも遅し早し、上りの電車が運悪く地を撼かしてやってきたので、たちまちその黒い大きい一塊物は、あなやという間に、三、四間ずるずると引き摺られて、紅い血が一線長くレールを染めた。