Japanische Klassiker mit Furigana
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くすりゆびのまがり
薬指の曲り
田中 貢太郎
Lesen Sie 薬指の曲り (くすりゆびのまがり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.603 Zeichen · 6 Bildschirme
と、母が好く云いました。そんな人でありますから、母に対しても非常に優しかったと見えます。それは養子と云うこともありましたろうが、しかし、いったいにおとなしい生れであったと思われます。従って気も弱かったらしゅうございます。大きな負傷をした患者が来たりすると、患者よりも父の方が驚いて、顔色を真蒼にして治療をしたと云います。
ある時、腰に腫物の出ている患者の局部を、父が恐る恐る切開していると、患者の方から、
「先生、そんなに痛くはありませんよ、ひと思いに切ってください」
と云ったと云って、これは母が私に話しました。其の父が亡くなりますと、親類では、母がまだ壮いし、家業が家業でありますから、母に養子をして、医師をやらそうと云うことになりましたが、何と云っても母が承知しません。尤も、間もなく医術開業試験の規則が出来て、もうお情け免状を相続することはできなくなりましたが……、其の時すぐ養子をすると、まだ一代は其の恩典に浴することはできましたが、私の家にはちょっとした財産がありまして、其の日に困ると云うほどでもありませんでしたから、親類も其のままにしてありました。