Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くすりゆびのまがり

薬指の曲り

田中 貢太郎

Lesen Sie 薬指の曲り (くすりゆびのまがり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.603 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

父から比べると、母はしっかりした、勝気な処がありました。其の母が、私が八歳の夏でした。今考えると、チブスのような病気になって、非常に熱があって、其の比南の方から流れて来ていた山田と云う医師にかかっておりましたが、其の医師がどうも癒るのが困難しいと云いだしましたので、親類の者がかわりばんこに看病に来てくれましたが、大病と云うので、何人も家の内で大きな声をする者がなく、親類の者同志で顔を見あわすと、何か黒い重い物が眼前に浮んでいるような顔をしました。それを見ると、私も小供心に悲しいとも恐ろしいとも、何んとも云えない気になって、母の枕頭へ往ったり、次の室で親類の者がひそひそと話している傍へ往ったりしておりました。

ところが、ある夜、むし暑い晩でした。其の時は、何時も親類の何人かが必ず一人は坐っていてくれる母の枕頭に、何人もいないで、私一人が坐っておりますと、玄関口の方でからからと云う下駄の音が聞えました。そして、暫くすると、一人の医師が小さな薬籠を手にして入って来ました。私は山田先生が来てくれたと思っていると、医師は母の枕頭へ、私の方へ右斜に向くように坐って、白い右の手を母の額にやって、そっと撫でながら、私の方を見て、