Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋 (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.078 Zeichen · 25 Bildschirme
宮川町の唄女のお梶どのといえば、いかに美しい若女形でも、足元にも及ぶまいと、かねがね人々の噂には聞いていたが、始めて見れば聞きしに勝るそなたの美しさじゃ。器量自慢であったこの藤十郎さえ、そなたと連れて舞うのは、身が退けるほどに、思うたのじゃ……。(じっと、さし俯く)
お梶 (顔を火のごとく赤くしながら、さし俯いて言葉なし)
藤十郎 (必死に緊張しながら)その時からじゃ、そなたを、世にも希なる美しい人じゃと思い染めたのは。
お梶 (さし俯きながら、いよいようなだれて、身体をかすかに、わななかせる)……。
藤十郎 (恋をする男とは、どうしても受取れぬほどの澄んだ冷たい目付きで、顔さえもたげぬ女を、刺し通すほどに鋭く見詰めながら、声だけには、激しい熱情に震えているような響きを持たせて)そなたを見初めた当座は、折があらばいい寄ろうと、始終念じてはいたものの、若衆方の身は、親方の掟が厳しゅうてなあ。寸時も己が心には、委せぬ身体じゃ。ただ心だけは、焼くように思い焦がれても、所詮は機を待つよりほかはないと、思い諦めている内に、二十の声を聞かずに、そなたはこの家の主人、清兵衛どのの思われ人となってしまわれた。