Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
もし手足の挙止が、内面の消息を形而下に運び来る記号となり得るならば、この二人ほどに長閑な母子は容易に見出し得まい。退屈の刻を、数十の線に劃して、行儀よく三つ鱗の外部を塗り潰す子と、尋常に手を膝の上に重ねて、一劃ごとに黒くなる円の中を、端然と打ち守る母とは、咸雍の母子である。和怡の母子である。挟さむ洋卓に、遮らるる胸と胸を対い合せて、春鎖す窓掛のうちに、世を、人を、争を、忘れたる姿である。亡き人の肖像は例に因って、壁の上から、閑静なるこの母子を照らしている。
丹念に引く線はようやく繁くなる。黒い部分はしだいに増す。残るはただ右手に当る弓形の一ヵ所となった時、がちゃりと釘舌を捩る音がして、待ち設けた藤尾の姿が入口に現われた。白い姿を春に託す。深い背景のうちに肩から上が浮いて見える。甲野さんの鉛筆は引きかけた線の半ばでぴたりと留った。同時に藤尾の顔は背景を抜け出して来る。
「炙り出しはどうして」と言いながら、母の隣まで来て、横合から腰を卸す。卸し終った時、また、
「出て?」と母に聞く。母はただ藤尾の方を意味ありげに見たのみである。甲野さんの黒い線はこの間に四本増した。