Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
せっかく相談に来たんだから」
しばらく罫紙の上の楽書を見詰めていた甲野さんは眼を上げると共に穏かに云い切った。
「宗近の方が小野より母さんを大事にします」
「そりゃ」とたちまち出る。後から静かに云う。
「そうかも知れない――御前の見た眼に間違はあるまいが、ほかの事と違って、こればかりは親や兄の自由には行かないもんだからね」
「藤尾が是非にと云うんですか」
「え、まあ――是非とも云うまいが」
「そりゃ私も知っている。知ってるんだが。――藤尾はいますか」
「呼びましょう」
母は立った。薄紅色に深く唐草を散らした壁紙に、立ちながら、手頃に届く電鈴を、白きただ中に押すと、座に返るほどなきに応がある。入口の戸が五寸ばかりそっと明く、ところを振り返った母が
「藤尾に用があるからちょいと」と云う。そっと明いた戸はそっと締る。
母と子は洋卓を隔てて差し向う。互に無言である。欽吾はまた鉛筆を取り上げた。三つ鱗の周囲に擦れ擦れの大きさに円を描く。円と鱗の間を塗る。黒い線を一本一本叮嚀に並行させて行く。母は所在なさに、忰の図案を慇懃に眺めている。
二人の心は無論わからぬ。ただ上部だけはいかにも静である。