Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme

Aozora Bunko

自分がこの鏡のなかに織り込まれているときは、春である、豊である、ことごとく幸福である。鏡の面から自分の影を拭き消すと闇になる、暮になる。すべてが悲惨になる。この一団の精神から、自分の魂だけを切り離す談判をするのは、小さき竈に立つべき煙を予想しながら薪を奪うと一般である。忍びない。人は眼を閉って苦い物を呑む。こんな絡んだ縁をふつりと切るのに想像の眼を開いていては出来ぬ。そこで小野さんは眼の閉れた浅井君を頼んだ。頼んだ後は、想像を殺してしまえば済む。と覚束ないが決心だけはした。しかし犬一匹でも殺すのは容易な事ではない。持って生れた心の作用を、不都合なところだけ黒く塗って、消し切りに消すのは、古来から幾千万人の試みた窮策で、幾千万人が等しく失敗した陋策である。人間の心は原稿紙とは違う。小野さんがこの決心をしたその晩から想像力は復活した。――

瘠せた頬を描く。落ち込んだ眼を描く。縺れた髪を描く。虫のような気息を描く。――そうして想像は一転する。

血を描く。物凄き夜と風と雨とを描く。寒き灯火を描く。白張の提灯を描く。――ぞっとして想像はとまる。

想像のとまった時、急に約束を思い出す。