Japanische Klassiker mit Furigana
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むし
虫
江戸川 乱歩
Lesen Sie 虫 (むし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.053 Zeichen · 86 Bildschirme
でも、塞いだ口は、一層生前に近くなって、厚ぼったい花弁の重なり合った様な恰好が、いとしく、好ましかった。可愛らしい小鼻がいきんだ様に開いて、その肉が美しく透通って見えるのも、云い難き魅力であった。
「僕達はこの広い世の中で、たった二人ぼっちなんですよ。誰も相手にしてくれない、のけ者なんですよ。僕は人に顔を見られるのも恐ろしい、人殺しの大罪人だし、あなたは、そう、あなたは死びとですからね。私達はこの土蔵の厚い壁の中に、人目をさけて、ひそひそと話をしたり、顔を眺め合っているばかりですよ。淋しいですか。あなたはあんな華やかな生活をしていた人だから、これでは、あんまり淋し過ぎるかも知れませんね」
彼はそんな風に、死骸と話し続けながら、ふと古い古い記憶を呼起していた。田舎風の、古めかしく陰気な、八畳の茶の間の片隅に、内気な弱々しい子供が、積木のおもちゃで、彼のまわりに切れ目のない垣を作り、その中にチンと坐って、女の子の様に人形を抱いて、涙ぐんで、そのお人形と話をしたり、頬ずりをしたりしている光景である。云うまでもなく、それは柾木愛造の六七才の頃の姿であったが、その折の内気な青白い少年が、大きくなって、積木の垣の代りに、土蔵の中にとじ籠り、お人形の代りに芙蓉のむくろと話をしているのだ。