Japanische Klassiker mit Furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Lesen Sie 虹の橋 (にじのはし) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.038 Zeichen · 30 Bildschirme
苦労したおかげで、やさしくおなりだとか、人間が変ったようだとか、そんな言葉さえ、いっこうに気にならなくなった。
「夢の話はね、あとでゆっくり聞きます。血圧があがるといけないから、眼をつぶって、眠るつもりになるのよ」
「そろそろ眠りかけている」
「嘘ばっかし。そばにいると、ご機嫌がよくなってだめなのね。あたしは夕食の仕度にかかりますから、ほんとうに眠るつもりになってちょうだい」
フサは眠るつもりになったらしく、うむとうなずいた。つくづくと見ていると、仏縁でもありそうな清浄な顔だちで、いやがらせをするような人柄とも思えない。やはりひがみだったのだと、あさひの気持はすぐ落着いた。
あさひは茶の間を通って勝手へ行った。水口が露路につづく狭い台所だが、眼の不自由な老人が一人暮しをしていただけあって、庖丁の掛け場所、笊の置きどころまで、仕勝手よく考えてあって、菜を茹るにも居まわりで用の足りる便利さといったらなかった。
あさひは、水口のガラス戸に凭れて、夕食のお菜はなににしようと熱心に考えた。それとなくさぐりを入れ、嗜好や物癖をのみこんだが、なにもお祖母さん、かにもお祖母さんで、じぶんの食べるもののことは、てんで計画に入っていないことに気がつくと、つい笑いだしてしまう。