Japanische Klassiker mit Furigana
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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
Lesen Sie 蛇性の執念 (じゃせいのしゅうねん) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.981 Zeichen · 38 Bildschirme
その前にお座りになり、御肖像に向ってさめざめと泣いて入らっしゃるのでございます。お可哀想で見て居られませんでした。それは毎夜の事でございましたが、後にはお気が変におなりになったのではあるまいかと、疑った事もございました。
ある雨の降る晩でございました、いつものように、私はそっと襖の蔭から覗きますと、大奥様は早口で何か御肖像にお話しかけていらっしゃいました。時々は淋しい笑をさえお洩しになります。雨の戸を打つ音でお言葉は断続してよくきき取れませんが、何とも云えない寂しさに我知らず身震いいたしました。
大奥様の御病気はそう御重態というほどでもございませんが、一向はかばかしくはお癒になりません。お医者様からは厳重に絶対安静を申渡されました。夜は申上げたような次第ですが、日中はおとなしくお床の上に休んでいらっしゃいました。
ある日、大奥様は一度大旦那様の御墓参がしたいと仰しゃいました。お医者様に御相談すれば無論いけないと申されるに定まって居ます。しかし大奥様は何と申上げてもお聴きになりません。已むなくお天気の好い日の暖かい時刻を計って、お医者様には内密で、私がお伴をしてお墓参りにまいることにいたしました。