Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんじん
蛮人
山本 周五郎
Lesen Sie 蛮人 (ばんじん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.726 Zeichen · 13 Bildschirme
かなたを見やっていた。
流れる雲や風に揺れる木葉は、人の胸に隠れている幻想をかきたてるものだ、彼の眼には数々の追憶がうかびあがる。
「――ふしぎだ」
と彼は放心したように呟く、「どうして、こんな遠い所へ来たんだろう、もしかしてこれがながい途方もない夢ででもあったら――女房があそこの道から夜業の弁当を持ってやって来るとしたら……家には子供が待ってる、窓框の壊れたところを直すはずだった、たしかそのために釘を買ってきた日だった――あの極道野郎めが、あの……」
彼は突然その両手で頭を掴み、絞りだすような声で呻いた。
「あら、この鶏は死にそうだわ」
ふいに後で声がした、彼はぎょっとして振返るとそこにお房が立っていた。
「もう駄目らしいわねえ」
「――うん」
彼は狼狽しながら外向いた、女はその横顔から眼を放さずにからかうような口調で云った。
「どうせ駄目なら今のうちにつぶしちゃったらどう、あたしが絞めてあげるよ、羽根でふわふわした首をぎゅっと絞めるのは良い気持だわ――」
「そんな……罪なことを云うものじゃねえ、商売でもおめえ――」
「気が弱いのねあんた」
女は眼を光らせながら云った、「それでよく人殺しなんかできたもんだ、ねえ――やったのは男? それとも……」