Japanische Klassiker mit Furigana
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しじみだに
蜆谷
山本 周五郎
Lesen Sie 蜆谷 (しじみだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.957 Zeichen · 28 Bildschirme
母の灰色になった髪毛が、心の忿りをあらわすかのように、うす暗い燈火のなかできらきらと震えた、「……おまえが討死でもしたとわかっていたら、私はとうに生きてはいられなかったよ」
弥之助はその夜どうしても眠れなかった。
頭は燃えるようだ――掌には膏汗をにぎりながら、躯も足も氷のように冷え、休みなしにわなわなと震えた。……おさえようとすればするほど忿怒が逆につきあげてくる。
――なにもかも戦に負けたからだ、村の者が悪いんじゃない負けいくさのためだ、人間は誰しも自分が可愛いのさ。
そう思うあとから、しかし戦に負けたのはおれのせいじゃない、軍卒になったのも自分の欲からじゃあない、お布令がまわったから出たのだ。そのとき村の者たちは、おのれらの責任がのがれたのを喜んで、あんなお為ごかしなばか騒ぎをやったじゃあないか、いったい彼らは、このいくさでどんな損をしたというんだ。彼は叫びだそうとするのをおさえるために夜具の袖を噛み野獣のようにうめいた。
まだ暗いうちに表の戸を明ける者があった。眠れずにいた弥之助が出てゆくと、お八重が雪まみれになった笠や蓑を脱いでいた。
「おばさんお早う、今日はいかないでしょう」