Japanische Klassiker mit Furigana
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けさともりとお
袈裟と盛遠
Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme
己は衣川の家で、袈裟と一つ部屋の畳へ坐った時、既にこの未練がいつか薄くなっているのに気がついた。それは己がもう童貞でなかったと云う事も、その場になって、己の欲望を弱める役に立ったのであろう。しかしそれよりも、主な原因は、あの女の容色が、衰えていると云う事だった。実際今の袈裟は、もう三年前の袈裟ではない。皮膚は一体に光沢を失って、目のまわりにはうす黒く暈のようなものが輪どっている。頬のまわりや顋の下にも、以前の豊な肉附きが、嘘のようになくなってしまった。僅に変らないものと云っては、あの張りのある、黒瞳勝な、水々しい目ばかりであろうか。――この変化は己の欲望にとって、確かに恐しい打撃だった。己は三年ぶりで始めてあの女と向い合った時、思わず視線をそらさずにはいられなかったほど、強い衝動を感じたのを未にはっきり覚えている。……
では、比較的そう云う未練を感じていない己が、どうしてあの女に関係したのであろう。己は第一に、妙な征服心に動かされた。袈裟は己と向い合っていると、あの女が夫の渡に対して持っている愛情を、わざと誇張して話して聞かせる。しかも己にはそれが、どうしてもある空虚な感じしか起させない。