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Japanische Klassiker mit Furigana

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けさともりとお

袈裟と盛遠

芥川 竜之介

Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

「この女は自分の夫に対して虚栄心を持っている。」――己はこう考えた。「あるいはこれも、己の憐憫を買いたくないと云う反抗心の現れかも知れない。」――己はまたこうも考えた。そうしてそれと共に、この嘘を暴露させてやりたい気が、刻々に強く己へ働きかけた。ただ、何故それを嘘だと思ったかと云われれば、それを嘘だと思った所に、己の己惚れがあると云われれば、己には元より抗弁するだけの理由はない。それにも関らず、己はその嘘だと云う事を信じていた。今でも猶信じている。

が、この征服心もまた、当時の己を支配していたすべてではない。そのほかに――己はこう云っただけでも、己の顔が赤くなるような気がする。己はそのほかに、純粋な情欲に支配されていた。それはあの女の体を知らないと云う未練ではない。もっと下等な、相手があの女である必要のない、欲望のための欲望だ。恐らくは傀儡の女を買う男でも、あの時の己ほどは卑しくなかった事であろう。

とにかく己はそう云ういろいろな動機で、とうとう袈裟と関係した。と云うよりも袈裟を辱めた。そうして今、己の最初に出した疑問へ立ち戻ると、――いや、己が袈裟を愛しているかどうかなどと云う事は、いくら己自身に対してでも、今更改めて問う必要はない。