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Japanische Klassiker mit Furigana

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けさともりとお

袈裟と盛遠

芥川 竜之介

Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

もし出来たなら、その時に、己は己の約束をその場で破ってしまいたかった。そうして、あの不貞な女を、辱しめと云う辱しめのどん底まで、つき落してしまいたかった。そうすれば己の良心は、たとえあの女を弄んだにしても、まだそう云う義憤の後に、避難する事が出来たかも知れない。が、己にはどうしても、そうする余裕が作れなかった。まるで己の心もちを見透しでもしたように、急に表情を変えたあの女が、じっと己の目を見つめた時、――己は正直に白状する。己が日と時刻とをきめて、渡を殺す約束を結ぶような羽目に陥ったのは、完く万一己が承知しない場合に、袈裟が己に加えようとする復讐の恐怖からだった。いや、今でも猶この恐怖は、執念深く己の心を捕えている。臆病だと哂う奴は、いくらでも哂うが好い。それはあの時の袈裟を知らないもののする事だ。「己が渡を殺さないとすれば、よし袈裟自身は手を下さないにしても、必ず、己はこの女に殺されるだろう。そのくらいなら己の方で渡を殺してしまってやる。」――涙がなくて泣いているあの女の目を見た時に、己は絶望的にこう思った。しかもこの己の恐怖は、己が誓言をした後で、袈裟が蒼白い顔に片靨をよせながら、目を伏せて笑ったのを見た時に、裏書きをされたではないか。