Japanische Klassiker mit Furigana
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せいりんず
西林図
久生 十蘭
Lesen Sie 西林図 (せいりんず) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.309 Zeichen · 21 Bildschirme
冬木は、
「再び一点をつくれば、すなわち俗というのはこれだね。あんなものがいるので、せっかくの庭が俗っぽくなってしまった」
というと、冬亭は池の端にしゃがみこんで煙草を吸いながら、
「そうですよ。乱杭石のあるあたりは、大切な空間なんですから、鶴なんかいるのは困ります」
と気のない調子でいった。冬木は、つまらなくなって、片付けるものは早く片付けてしまえと、
「そろそろやろうか」
と催促すると、冬亭はしぶしぶ立ちあがって、折りとった桔梗を一茎手に持ったまま、鶴のいるほうへぶらぶら歩きだした。
汀について水門のほうへ行くと、淙々とはげしい水音がきこえ、築山の影が迫って、ひときわ濃くなった暮れ色のなかで、鶴が嘴を胸にうずめ、片脚だけで寂然と立っていた。近くで見ると、鳥のようではなく、大きな煤のかたまりが空から舞い落ちてきたような感じで、葵色がかった脚の赤さが、へんに不気味だった。
冬亭は岸に立って、漠然と鶴をながめていたが、
「眠っているんですね。起こしてやりましょう」
というと、袂からマロニエの実をだして鶴に投げつけた。鶴は首をあげて、じろりとこちらへふりかえると、ちょっと羽づくろいをし、脚を踏みかえただけで、また動かなくなってしまった。