Japanische Klassiker mit Furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lesen Sie 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.162 Zeichen · 59 Bildschirme
家内は総門の左になったシナ人の下宿が門の内へ倒れかかっている下を通って街路へ出、街路の向う側、藤寺の墓地の垣に添うて立っている五六人の者と一緒になった。私はやや心に余裕が出来た。私は校長の家へと眼をやった。校長の家の屋根は瓦がたくさん剥げ落ちていた。私の眼は今度は右の方へと往った。そこには家主の赤い煉瓦塀があって此方との境をしており、その上に一本の煙突があって平生店子を督視しているように立っているが、どうしたことかそれが見えない。私は不思議に思って気をつけて見た。煙突は向う隣の素人下宿屋の台所の屋根に倒れ落ちて、その屋根をめりこましていた。煉瓦塀は砕けて路次の行詰を埋めていた。私はいきなり向う隣の非常口の木戸の戸を開けた。
「有馬さん、有馬さん、大丈夫ですか」
と、間をおいて病身な主人の声が台所の方でした。
「た、あ、な、か、さん、で、す、かア」
主人は台所に這いつくばって、起きようともがいているところであった。
「けがはなかったのですか」
「けエがアは、ありイませんが……」
主人はのっそりと起きて来た。
「えらいことでしたね、けががなかったなら好いのですね、でも、まだ危険ですから、外へ出ようじゃありませんか」