Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.146 Zeichen · 40 Bildschirme

Aozora Bunko

「おっ母さんが来るからです」とおえいは答えた、「こんどおっ母さんが来れば、きっと先生はこの子をおろすでしょう、だから逃げだして、よそで産もうと思ったんです」

登は五拍子ほどまをおいて訊いた、「しかし、父親なしで子を育てるのは、そうやさしいことじゃないだろう」

「ふん」とおえいが云った、「父親なんて、――いないほうがよっぽどましです」

「どうして」と登が訊いた。

おえいはやはり壁のほうを見たまま、無感動な調子で語りだした。

彼女の父は佐太郎といい、いまは行方知れずになっているが、元は芸人であった。なんの芸をやるともきまっていない、三味線が弾けて、ちょっと喉がいいくらいのものだったろう。小芝居へ出るとか、客の座敷へ呼ばれるとか、またながしをするといったぐあいで、稼ぎというほどのものもなかったようだし、稼いだ物を家へ入れることなどはごく稀であった。――母のおかねとは居酒屋ででも知りあったらしく、おかねのほうが佐太郎にのぼせていて、喧嘩の絶え間がなかった。それも生活の苦しいためではなく、佐太郎に女ができはしないか、という嫉妬がもとであった。

――あたしは銭金のことなんか云やあしないよ、とおかねはいつも云った。