Japanische Klassiker mit Furigana
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かけこみうったえ
走れメロス
Lesen Sie 走れメロス (かけこみうったえ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.745 Zeichen · 112 Bildschirme
「そうですか。いくら差し上げたら、いいのでしょう」
「さあ、いくらでも」と口ごもっている。
「五十円あげましょうか」
「はあ」
私は机の上に、紙幣を並べた。たまらなくなって来た。
「みんな、あげましょう。九十円あります。煙草銭だけは、僕は、こちらの財布に残してあります」
なぜ、こんなところに来たのだろうと思った。
「相すみません。おあずかり致します」
女中は、去った。怒ってはならない。大事な仕事がある。いまの私の身分には、これ位の待遇が、相応しているのかも知れない、と無理矢理、自分に思い込ませて、トランクの底からペン、インク、原稿用紙などを取り出した。
十年ぶりの余裕は、このような結果であった。けれども、この悲しさも、私の宿命の中に規定されて在ったのだと、もっともらしく自分に言い聞かせ、怺えてここで仕事をはじめた。
遊びに来たのでは無い。骨折りの仕事をしに来たのだ。私はその夜、暗い電燈の下で、東京市の大地図を机いっぱいに拡げた。
幾年振りで、こんな、東京全図というものを拡げて見る事か。十年以前、はじめて東京に住んだ時には、この地図を買い求める事さえ恥ずかしく、人に、田舎者と笑われはせぬかと幾度となく躊躇した後、とうとう一部、うむと決意し、ことさらに乱暴な自嘲の口調で買い求め、それを懐中し荒んだ歩きかたで下宿へ帰っ