Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えつねん

越年

岡本 かの子

Lesen Sie 越年 (えつねん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.003 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「堂島さん! ちょっと話があります。待って下さい」

加奈江はすかさず堂島の外套の背を握りしめて後へ引いた。明子もその上から更に外套を握って足を踏張った。堂島は周章てて顔を元に戻したが、女二人の渾身の力で喰い止められてそれのまま遁れることは出来なかった。五人の一列は堂島を底にしてV字型に折れた。

「よー、こりゃ素敵、堂島君は大変な女殺しだね」

同僚らしいあとの四人は肩組も解いてしまって、呆れて物珍らしい顔つきで加奈江たちを取巻いた。

「いや、何でもないよ。一寸失敬する」

そういって堂島は加奈江たちに外套の背を掴まれたまま、連れを離れて西の横丁へ曲って行った。小さな印刷所らしい構えの横の、人通りのないところまで来ると堂島は立止まった。離して逃げられでもしたらと用心して確っかり握りしめてついて来た加奈江は、必死に手に力をこめるほど往時の恨みが衝き上げて来て、今はすさまじい気持ちになっていた。

「なぜ、私を撲ったんですか。一寸口を利かなかったぐらいで撲る法がありますか。それも社を辞める時をよって撲るなんて卑怯じゃありませんか」

加奈江は涙が流れて堂島の顔も見えないほどだった。