Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えつねん

越年

岡本 かの子

Lesen Sie 越年 (えつねん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.003 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

張りつめていた復讐心が既に融け始めて、あれ以来の自分の惨めな毎日が涙の中に浮び上った。

「本当よ、私たちそんな無法な目にあって、そのまま泣き寝入りなんか出来ないわ。課長も訴えてやれって言ってた。山岸さんなんかも許さないって言ってた。さあ、どうするんです」

堂島は不思議と神妙に立っているきりだった。明子は加奈江の肩を頻りに押して、叩き返せと急きたてた。しかし女学校在学中でも友達と口争いはしたけれども、手を出すようなことの一度だってなかった加奈江には、いよいよとなって勢いよく手を上げて男の顔を撲るなぞということはなかなか出来ない仕業だった。

「あんまりじゃありませんか、あんまりじゃありませんか」

そういう鬱憤の言葉を繰返し繰返し言い募ることによって、加奈江は激情を弾ませて行って

「あなたが撲ったから、私も撲り返してあげる。そうしなければ私、気が済まないのよ」

加奈江は、やっと男の頬を叩いた。その叩いたことで男の顔がどんなにゆがんだか鼻血が出はしなかったかと早や心配になり出す彼女だった。叩いた自分の掌に男の脂汗が淡くくっついたのを敏感に感じながら、加奈江は一歩後退った。