Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
ほかのもののように足早に新橋の方へ立ち去る景色もない。何を探がしているのだろう、もしや東京のものでなくて様子が分らんのなら教えて遣りたいと思ってなお目を放さずに打ち守っていると、どこをどう潜り抜けたものやら、六十ばかりの婆さんが飛んで出て、いきなり軍曹の袖にぶら下がった。軍曹は中肉ではあるが背は普通よりたしかに二寸は高い。これに反して婆さんは人並はずれて丈が低い上に年のせいで腰が少々曲っているから、抱き着いたとも寄り添うたとも形容は出来ぬ。もし余が脳中にある和漢の字句を傾けて、その中からこのありさまを叙するに最も適当なる詞を探したなら必ずぶら下がるが当選するにきまっている。この時軍曹は紛失物が見当ったと云う風で上から婆さんを見下す。婆さんはやっと迷児を見つけたと云う体で下から軍曹を見上げる。やがて軍曹はあるき出す。婆さんもあるき出す。やはりぶらさがったままである。近辺に立つ見物人は万歳万歳と両人を囃したてる。婆さんは万歳などには毫も耳を借す景色はない。ぶら下がったぎり軍曹の顔を下から見上げたまま吾が子に引き摺られて行く。冷飯草履と鋲を打った兵隊靴が入り乱れ、もつれ合って、うねりくねって新橋の方へ遠かって行く。