Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
余は浩さんの事を思い出して悵然と草履と靴の影を見送った。
二
浩さん! 浩さんは去年の十一月旅順で戦死した。二十六日は風の強く吹く日であったそうだ。遼東の大野を吹きめぐって、黒い日を海に吹き落そうとする野分の中に、松樹山の突撃は予定のごとく行われた。時は午後一時である。掩護のために味方の打ち出した大砲が敵塁の左突角に中って五丈ほどの砂煙りを捲き上げたのを相図に、散兵壕から飛び出した兵士の数は幾百か知らぬ。蟻の穴を蹴返したごとくに散り散りに乱れて前面の傾斜を攀じ登る。見渡す山腹は敵の敷いた鉄条網で足を容るる余地もない。ところを梯子を担い土嚢を背負って区々に通り抜ける。工兵の切り開いた二間に足らぬ路は、先を争う者のために奪われて、後より詰めかくる人の勢に波を打つ。こちらから眺めるとただ一筋の黒い河が山を裂いて流れるように見える。その黒い中に敵の弾丸は容赦なく落ちかかって、すべてが消え失せたと思うくらい濃い煙が立ち揚る。怒る野分は横さまに煙りを千切って遥かの空に攫って行く。あとには依然として黒い者が簇然と蠢めいている。この蠢めいているもののうちに浩さんがいる。