Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
火桶を中に浩さんと話をするときには浩さんは大きな男である。色の浅黒い髭の濃い立派な男である。浩さんが口を開いて興に乗った話をするときは、相手の頭の中には浩さんのほか何もない。今日の事も忘れ明日の事も忘れ聴き惚れている自分の事も忘れて浩さんだけになってしまう。浩さんはかように偉大な男である。どこへ出しても浩さんなら大丈夫、人の目に着くにきまっていると思っていた。だから蠢めいているなどと云う下等な動詞は浩さんに対して用いたくない。ないが仕方がない。現に蠢めいている。鍬の先に掘り崩された蟻群の一匹のごとく蠢めいている。杓の水を喰った蜘蛛の子のごとく蠢めいている。いかなる人間もこうなると駄目だ。大いなる山、大いなる空、千里を馳け抜ける野分、八方を包む煙り、鋳鉄の咽喉から吼えて飛ぶ丸――これらの前にはいかなる偉人も偉人として認められぬ。俵に詰めた大豆の一粒のごとく無意味に見える。嗚呼浩さん! 一体どこで何をしているのだ? 早く平生の浩さんになって一番露助を驚かしたらよかろう。
黒くむらがる者は丸を浴びるたびにぱっと消える。消えたかと思うと吹き散る煙の中に動いている。