Japanische Klassiker mit Furigana
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おどるびじんぞう
踊る美人像
野村 胡堂
Lesen Sie 踊る美人像 (おどるびじんぞう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.460 Zeichen · 31 Bildschirme
「さア、踊りましょうよ、滅茶滅茶に」
電気蓄音機が再び獰猛にフォックス・トロットを唸って、女中は忙しく盃を運び代えます。
「明日は帝都劇場の初日だろう、もうボツボツ引上げた方がよくは無い?」
石郷氏は、誰へともなく斯う言います。多分皆んなは引上げてくれ。私だけ残る、と言った謎だったかも知れません。
「宜いわよ、まだ十時少し廻ったばかりじゃないの。十二時までは大丈夫よ」
踊りの輪は又活々と廻り始めました。和服姿の千種十次郎はそぐわない心持で、マジマジとこの歓楽の渦を眺めて居ります。入るべからざる禁苑に入り込んで、見ては悪い妖精の乱舞を見て居るような、異様な自責に息がはずみます。
踊りの輪は妖しくも華やかに咲き崩れます。アルコールに浸った狭い室の空気は、この六人の男女を気違い染みた亢奮に誘って行くのでしょう。
「千種さん」
そっと囁くように呼びかける者があります。振り返ると、日蔭に咲いた花のような、若い淋しい娘が一人、物言い度気に十次郎の顔を差し覗いて居ります。
「何誰でした」
「私――柳の妹、雪って申します」
柳糸子に美しい歌い手の妹があることを聞かないではありませんが、それが、歓楽の渦を巻くこの室の隅っこに、置き忘れた人形のように、誰にも構われずに居ようとは思いもかけなかったのです。