Japanische Klassiker mit Furigana
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じじょにかえて
近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
蔵原 伸二郎
Lesen Sie 近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎 (じじょにかえて) von 蔵原 伸二郎 (くらはらしんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.296 Zeichen · 17 Bildschirme
老いたきつね
枯野に
自分が一人しかいないのを
それ故に自分が野原の一部分であり
全体であるのを
風になることも枯草になることも
そうしてひとすじの光にさえなることも
狐いろした枯野の中で
まるで あるかないかの
影のような存在であることも知つている
まるで風のように走ることも 光よりも早く
走ることもしつている
それ故に じぶんの姿は誰れにも見えない
のだと思つている
見えないものが 考えながら走つている
考えだけが走つている
いつのまにか枯野に昼の月が出ていた
老いたきつね
冬日がてつている
いちめん
すすきの枯野に冬日がてつている
四五日前から
一匹の狐がそこにきてねむつている
狐は枯れすすきと光と風が
自分の存在をかくしてくれるのを知つている
狐は光になる 影になる そして
何万年も前からそこに在つたような
一つの石になるつもりなのだ
おしよせる潮騒のような野分の中で
きつねは ねむる
きつねは ねむりながら
光になり、影になり、石になり雲になる
夢をみている
狐はもう食欲がないので
今ではこの夢ばかり見ているのだ
夢はしだいにふくらんでしまつて
無限大にひろがつてしまつて
宇宙そのものになつた