Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かとにん

過渡人

豊島 与志雄

Lesen Sie 過渡人 (かとにん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.206 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

睡眠の足りた生気に満ちた顔、倦怠と疲労とを知らぬ眼の輝き。そして頑丈な体躯。

「何時東京へ帰るんだ。」

矢島さんは会社に出かける前にこうきいた。

「二三日うちに帰らなければなりません。」と秀男は答えた。

「ソフもせわしない人だね。」と常子は云った。「まだ学校は初まらないじゃないですか。」

「でも種々な用事があるんですから。そりゃあこれでも非常に忙しいんです。しなければならないことが馬鹿に沢山あるんですから。」

「何をそんなにすることがあるでしょうね。」常子は優しい眼で秀男を見た。「一度は会社の方も見に行ってごらん。参考になることがあるかも知れないから。」

「ええそうですね。」と秀男は気のない返事をした。

矢島さんはそういう会話を耳にしながら、仕度をして出て行った。

矢島さんの心に、毎日同じことをくり返してる自分の単調な生活がちらと映じた。然しそれはすぐに消えて、ある漠然としたとりとめもない圧迫が身に迫ってくるように感じた。

矢島さんは何かを待ち望むような心地で会社に入った。皆が丁寧に頭を下げるのに対して、彼は「やあ。」といつもの調子で答えた。それから自分の室に入って、煙草を一本吸った。