Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かとにん

過渡人

豊島 与志雄

Lesen Sie 過渡人 (かとにん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.206 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

六

」

矢島さんは其処から逃げるようにして立ち去った。そして給水池の所に来た時、何か罪の意識をでもふり落すように一二度頭を横に振った。が彼はそのまま事務室の方へ帰っていった。

六

秀男が東京へ発つ日は、妙にうすら寒い日であった。も一日延ばしてはと母から止められたけれど、予定があると云って彼はさっさと仕度をしてしまった。

「お前停車場まで行っておあげよ。」と矢島さんは慎吉に云った。

「僕も俥で行っていいでしょう。ねえお父さん。」と慎吉は嬉しそうに叫んだ。

「なに歩いて行くさ。文子と一緒においで。」

「姉さん行くの?」と慎吉は怪訝な顔をして姉の方を見た。

「文子お前も行っておいで、」と矢島さんは黙っている文子の方に云った。「兄弟三人でぶらぶら歩いて行ったらいいだろう。荷物だけ先に送っておくといい。」

「そうですね。」と秀男は父の方をじろりと見た。「それじゃ三人で行こう。僕が停車場で奢ってあげるよ。」

常子と文子は何だか変な笑顔を見せたが、やはり兄弟三人で出かけることになった。そして矢島さんは常子の後について皆を玄関まで送ってきた。

「それじゃあ参ります。」と秀男は父の前に頭を下げた。