Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かとにん

過渡人

豊島 与志雄

Lesen Sie 過渡人 (かとにん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.206 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

と矢島さんは我知らず心の中でくり返した。そしてそれに気がついた時、云い知れぬ不安に襲われた。

「然し若え者あ贅沢でいけません。娘がやって来るといつも穢ねえっちゃあ叱られますだ。」

「そう君にはいい娘があるそうだね。」

「なに仕方のねえ女でがさあ。……打たれた位では平気でしゃあしゃあしています。いえそう度々打つんじゃねえんでがすが、わっちの方も年とって力が無くなったんでさあ。へへへ、この頃ああべこべにやられますだ。年とって来ると若え者には敵わねえです。……でも感心に時々小使位は送ってくれます。何をしてるんだか尋ねもしましねえが、料理屋に居るんだとか云ってるですから、何れ碌なこたあしてねえでしょう。もういい婆あになりやがって、まだずうずうしくしてまさあ。」

「よく君はそれで淋しくないんだね。」

「へへへもうこうなっちゃあ、淋しい位は何でもねえです。気楽が一番の薬ですから。」

矢島さんはまたぐるりと部屋の中を見廻した。それから突然云った。

「やあ邪魔をしたね。」

「いえとんでもねえことです。」そして平田は矢島さんの顔色を窺った。「つまらねえことを饒舌って、御免下さい。