Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
かとにん
過渡人
豊島 与志雄
Lesen Sie 過渡人 (かとにん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.206 Zeichen · 41 Bildschirme
「ああ。」と矢島さんは答えた。
門を出ると文子は秀男の側へ寄って来た。
「お父さんは今日何だか変ね。」
「変じゃないよ。」
「だって……。」と云いかけたが、文子はそのまま黙って慎吉の方を顧みた。
三人が出て行った後、矢島さんは茶の間に帰って来た。
「みんな大きくなったもんだね。」
「大きくなる筈ですよ。私達がもういい加減年をとったんですもの。」と常子は云って、安らかな笑顔をした。
「そうだもういい加減年を取った。然し俺はまだそう老ぼれてやしない。」
「ほほほ今から老ぼれてはたまりませんよ。」
「だがお前はよほどお婆さんじみてきたよ。」
「そうでしょうか。」と云って常子は眼を瞬いた。然し彼女は心のうちで安らかに微笑んでいた。
何だかうそ寒い淋しさが矢島さんの心に寄せて来た。で彼はそのまま立ち上って書斎に入ってみた。
薄曇りの春の日が硝子障子に反映して、室の中は陰影のない明るみを湛えていた。矢島さんの好みで淡色に塗った壁にしつけられた書棚には、洋書や和書がぎっしりつまっていた。その前に大きい書卓があって室の真中には円い卓子が据えてある。正面の壁に亡父の大きい肖像と、左手の壁に西洋の種々な科学者の写真とが懸っている。