Japanische Klassiker mit Furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme
自分は、それが嫌でたまらなく思えたので、露わに眉を曇らして見せた。そして、火鉢の傍にあった茶盆を引き寄せて茶を入れて飲みながら、
「じゃ、早く聞いて来て貰おう。」追いやるように言った。すると、
「へえ、」と、相図のように頭を下げたが、まだ立とうともせず、手を伸ばして茶盆の中に伏せてある茶碗を起こして、自分がついだ茶の残りをついだ。それを平気な顔をして一口飲むとそそくさと立って行った。自分はそのあとで舌打ちをした。
しばらくすると、朝飯の膳が運ばれて、自分が箸をとっていると、その男がまた入って来た。そして咳を一つして火鉢の向こうに坐った。自分はチラと振り返えったが、黙って食事をしていた。
その男も黙って自分を見ていた。やがて、自分が食事をすませて、からだを振り向けると自分を見ていた目をつっと天井に反らせた。自分はからだを向けると、机の上に置いた煙草の箱を取って、中から一本摘んだ。その時に、
「で、吉井さんですがな。」と、その男が言う。
「ふん。いるだろうね。」
「いや。一昨日この先のS村の某と言う家に出て、留守だそうです。」
「留守?」
自分は、この男の言葉つきが、何となくうそを言っているように思えるので、わざと強く反問した。