Japanische Klassiker mit Furigana
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とおのへ
遠野へ
水野 葉舟
Lesen Sie 遠野へ (とおのへ) von 水野 葉舟 (みずのようしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.903 Zeichen · 117 Bildschirme
「へえ、留守だそうです。」と、「留守」を繰り返えした。
「困ったな。そのS村と言うのまでは使いをやれないかしら?」と、聞くと、
「使いはありません。」と、捨てたようにその男は首を振った。自分はむっとした。
「困るじゃないか。道でも悪いのか。」
「道も悪うござんす。まだ雪が解けないから、誰も行きません。」
「じゃ、馬にでも乗って行ってくれたらいいじゃないか?。」
「さ、それはあるかもしれませんな。けれど高いことを言いますぜ。」
「高いって、使い賃がか? それは仕方がない。とにかく、行ってくれる者をさがしてくれ。」
「へへ。」と、癖のようにちょっと頭を下げたが、黙って、自分の巻煙草の箱から一本つまみ出して、それに火をつけた。
自分はじっとその無作法な男のするさまを見ていた。
自分はこの山間の町に不意に来て、従兄を驚かそうと思っていたのだが、かえって行き違いになった。そのために今日一日は茫然として暮さねばならぬ、と思っているとその男が室の入口から首を出して「使いがありました。じゃすぐやりましょう?」と言って、出て行った。と、入れ違いに、下女が来て、
「いま、使いとおっしゃいましたが、ちょうど、中学の先生様がお通りになって、吉井さんは今日きっと帰えっておいでる筈だそうですから……と言っていらっしゃいましたが。