Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅうきちひょうりゅうきぶん
重吉漂流紀聞
久生 十蘭
Lesen Sie 重吉漂流紀聞 (じゅうきちひょうりゅうきぶん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.456 Zeichen · 52 Bildschirme
昨日、鯨の脂身だと思ったのはこれだったのかと、気色が悪くなって寒気が出た。部屋へ帰ってから下の二人に、昼はどうだったとたずねると、今日はお十五日だったせいか、たくさんにくれた。わけても鯨の脂身はうまかったといった。
船は六日ばかり東北のほうへ走り、その日の昼近く、うしろにゆるやかな山を背負ったものしずかな港へ入った。
いよいよ長崎の港に着いたかと、重吉は舷に凭れて酔ったように港の岸を眺めていると、エベットがきて、陸へ上がる仕度をせよという。おおかた奉行所へ連れて行かれるのであろうと思い、急いで部屋へ帰って御船印と御判物を首にかけ、下の二人に訳をいって、匆々、端舟に乗り移った。
岸に耳の長い見馴れぬ小馬が端舟の人数ほど出ている。奉行所は馬で行くほど遠いところにあるのかといぶかりながら、言われたようにエベットの尻馬に乗り、行列はそうして町のあるほうへ歩きだした。
道々、広い砂地のようなところを通る。長い棘の生えた異様な植物がそこ此処に群立っている。エベットにきくと、シャボテンという草だとおしえてくれた。そこを行くと、青々とした麦畑にいきあった。まだ二月だというのに、長崎は早く穂の出るところだと思っていると、行く手に白壁づくりの大きな家が見えだした。