Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

あとはようやく助かる。

脂は夜ごとの秋の霜にだんだん濃くなる。脂のなかに黒い筋が立つ。箒で敲けば煎餅を折るような音がする。黒い筋は左右へ焼けひろがる。もう危うい。

風がくる。垣の隙から、椽の下から吹いてくる。危ういものは落ちる。しきりに落ちる。危ういと思う心さえなくなるほど梢を離れる。明らさまなる月がさすと枝の数が読まれるくらいあらわに骨が出る。

わずかに残る葉を虫が食う。渋色の濃いなかにぽつりと穴があく。隣りにもあく、その隣りにもぽつりぽつりとあく。一面が穴だらけになる。心細いと枯れた葉が云う。心細かろうと見ている人が云う。ところへ風が吹いて来る。葉はみんな飛んでしまう。

高柳君がふと眼を挙げた時、梧桐はすべてこれらの径路を通り越して、から坊主になっていた。窓に近く斜めに張った枝の先にただ一枚の虫食葉がかぶりついている。

「一人坊っちだ」と高柳君は口のなかで云った。

高柳君は先月あたりから、妙な咳をする。始めは気にもしなかった。だんだん腹に答えのない咳が出る。咳だけではない。熱も出る。出るかと思うとやむ。やんだから仕事をしようかと思うとまた出る。