Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
机の前へ坐った先生は燐寸を擦って、しゅっと云う間に火をランプに移した。室はたちまち明かになる。道也先生のために云えばむしろ明かるくならぬ方が増しである。床はあるが、言訳ばかりで、現に幅も何も懸っておらん。その代り累々と書物やら、原稿紙やら、手帳やらが積んである。机は白木の三宝を大きくしたくらいな単簡なもので、インキ壺と粗末な筆硯のほかには何物をも載せておらぬ。装飾は道也先生にとって不必要であるのか、または必要でもこれに耽る余裕がないのかは疑問である。ただ道也先生がこの一点の温気なき陋室に、晏如として筆硯を呵するの勇気あるは、外部より見て争うべからざる事実である。ことによると先生は装飾以外のあるものを目的にして、生活しているのかも知れない。ただこの争うべからざる事実を確めれば、確かめるほど細君は不愉快である。女は装飾をもって生れ、装飾をもって死ぬ。多数の女はわが運命を支配する恋さえも装飾視して憚からぬものだ。恋が装飾ならば恋の本尊たる愛人は無論装飾品である。否、自己自身すら装飾品をもって甘んずるのみならず、装飾品をもって自己を目してくれぬ人を評して馬鹿と云う。