Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
吾が云いたくて云われぬ事は、世が聞きたくても聞かれぬ事は、天がわが手を縛するからである。人がわが口を箝するからである。巨万の富をわれに与えて、一銭も使うなかれと命ぜられたる時は富なき昔しの心安きに帰る能わずして、命を下せる人を逆しまに詛わんとす。われは呪い死にに死なねばならぬか。――たちまち咽喉が塞がって、ごほんごほんと咳き入る。袂からハンケチを出して痰を取る。買った時の白いのが、妙な茶色に変っている。顔を挙げると、肩から観世よりのように細い金鎖りを懸けて、朱に黄を交えた厚板の帯の間に時計を隠した女が、列のはずれに立って、中野君に挨拶している。
「よう、いらっしゃいました」と可愛らしい二重瞼を細めに云う。
「いや、だいぶ盛会ですね。冬田さんは非常な出来でしたな」と中野君は半身を、女の方へ向けながら云う。
「ええ、大喜びで……」と云い捨てて下りて行く。
「あの女を知ってるかい」
「知るものかね」と高柳君は拳突を喰わす。
相手は驚ろいて黙ってしまった。途端に休憩後の演奏は始まる。「四葉の苜蓿花」とか云うものである。曲の続く間は高柳君はうつらうつらと聴いている。