Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
「どこに」と一人が聞く。富田君は三寸ばかり開いていた硝子戸の間をちらと通り抜けたのである。
「あれは、よく食う奴じゃな」
「食う、食う」と答えたところによるとよほど食うと見える。
「人間は食う割に肥らんものだな。あいつはあんなに食う癖にいっこう肥えん」
「書物は沢山読むが、ちっとも、えろうならんのがおると同じ事じゃ」
「そうよ。御互に勉強はなるべくせん方がいいの」
「ハハハハ。そんなつもりで云ったんじゃない」
「僕はそう云うつもりにしたのさ」
「富田は肥らんがなかなか敏捷だ。やはり沢山食うだけの事はある」
「敏捷な事があるものか」
「いや、この間四丁目を通ったら、後ろから出し抜けに呼ぶものがあるから、振り反ると富田だ。頭を半分刈ったままで、大きな敷布のようなものを肩から纏うている」
「元来どうしたのか」
「床屋から飛び出して来たのだ」
「どうして」
「髪を刈っておったら、僕の影が鏡に写ったものだから、すぐ馳け出したんだそうだ」
「ハハハハそいつは驚ろいた」
「おれも驚ろいた。そうして尚志会の寄附金を無理に取って、また床屋へ引き返したぜ」
「ハハハハなるほど敏捷なものだ。それじゃ御互になるべく食う事にしよう。