Japanische Klassiker mit Furigana
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はまぎく
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (はまぎく) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.907 Zeichen · 29 Bildschirme
あアそうかと云いつつ、予も跡について起つ。敢て岡村を軽蔑して云った訳でもないが、岡村にそう聞取られるかと気づいて大いに気の毒になった。それで予は俄におとなしくなって跡からついてゆく。
内廊下を突抜け、外の縁側を右へ曲り、行止りから左へ三尺許りの渡板を渡って、庭の片隅な離れの座敷へくる。深夜では何も判らんけれど、昨年一昨年と二度ともここへ置かれたのだから、来て見ると何となくなつかしい。平生は戸も明けずに置くのか、空気の蒸せた黴臭い例のにおいが室に満ちてる。
「下女が居ないからね、此の通り掃除もとどかないよ。実は君が来ることを杉野や渋川にも知らせたかったが、下女がいないからね」岡村は言い分けのように独で物を云いつつ、洋燈を床側に置いて、細君にやらせたらと思う様な事までやる。隣の間から箒を持出しばさばさと座敷の真中だけを掃いて座蒲団を出してくれた。そうして其のまま去って終った。
予は新潟からここへくる二日前に、此の柏崎在なる渋川の所へ手紙を出して置いた。云ってやった通りに渋川が来るならば、明日の十時頃にはここへ来られる都合だが、こんな訳ならば、云うてやらねばよかったにと腹に思いながら、とにかく座蒲団へ胡坐をかいて見た。