Japanische Klassiker mit Furigana
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はまぎく
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (はまぎく) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.907 Zeichen · 29 Bildschirme
帰るしおが無かった。お松にはとても顔見合って別れることは出来ないところから、自分の気づかない間に逃げようとしたのだが、其機会を得られずに泊って終った。自分は夕飯をお松の膝に寄ってたべるのが嬉しかった事を覚えて居る。其夜は無論お松と一緒に寝た、お松が何か話をして聞かせた事を、其話は覚えて居ないが、面白かった心持だけは未だに忘れない。お松は翌朝自分の眠ってる内に帰ったらしかった。
其後自分は両親の寝話に「児供の余り大きくなるまで守りを置くのは良くない事だ」などと話してるのを聞いたように覚えてる。姉は頻りに自分にお松を忘れさせるようにいろいろ機嫌をとったらしかった。母はそれから幾度か、ねえやの処へ一度つれてゆくつれてゆくと云った。
自分が母につれられてお松が家の庭へ這入った時には、梅の花が黒い湿った土に散っていた。往来から苅葺のかぶった屋根の低い家が裏まで見透かされるような家であった。三時頃の薄い日影が庭半分にさしていて、梅の下には蕗の薹が丈高くのびて白い花が見えた。庭はまだ片づいていてそんなに汚くなかった。物置も何もなく、母家一軒の寂しい家であった。