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Japanische Klassiker mit Furigana

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はまぎく

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (はまぎく) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.907 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

車屋には彼が云う通りの外に、少し許り心づけをやる。車屋は有難うござりますと、詞に力を入れて繰返した。

もう寝たのかしらんと危ぶみながら、潜戸に手を掛けると無造作に明く。戸は無造作にあいたが、這入る足は重い。当り前ならば、尋ねる友人の家に著いたのであるから、やれ嬉しやと安心すべき筈だに、おかしく胸に不安の波が騒いで、此家に来たことを今更悔いる心持がするは、自分ながら訳が解らなかった。しかし此の際咄嗟に起った此の不安の感情を解釈する余裕は固よりない。予の手足と予の体躯は、訳の解らぬ意志に支配されて、格子戸の内に這入った。

一間の燈りが動く。上り端の障子が赤くなる。同時に其障子が開いて、洋燈を片手にして岡村の顔があらわれた。

「やア馬鹿に遅かったな、僕は七時の汽車に来る事と思っていた」

「そうでしょう、僕もこんなに遅くなるつもりではなかったがな、いやどうも深更に驚かして済まないなア……」

「まアあがり給え」

そういって岡村は洋燈を手に持ったなり、あがりはなの座敷から、直ぐ隣の茶の間と云ったような狭い座敷へ予を案内した。予は意外な所へ引張り込まれて、落つきかねた心の不安が一層強く募る。