Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
廃める
一
一
「や、矢野君だな、君、きょう来たのか、あそうか僕の手紙とどいて。」
主人はなつかしげに無造作にこういって玄関の上がりはなに立った。近眼の、すこぶる度の強そうな眼鏡で格子の外をのぞくように、君、はいらんかという。
矢野は細面手の色黒い顔に、こしゃこしゃした笑いようをしながら、くたびれたような安心したようなふうで、大儀そうに片手に毛布と鞄との一括を持ち、片手にはいいかげん大きいふろしき包みを二つ提げてる。ふろしき包みを持ったほうの手で格子戸を開けようとするがうまく開からない。主人はそれを見て土間に片足を落として格子戸を開けた。
「えらい風になった、君ほこりがひどかったろう。」
「えいたいへんな風でした。」
矢野はおっくうそうに物をいいながら、はかまの腰なる手ぬぐいをぬき、足袋のほこりをはたいて上へあがった。玄関の間のすみへ荷物をかた寄せ、鹿児島高等学校の記章ある帽子を投げるようにぬぎやって、狭い額の汗をふきながら、主人のあとについて次の間へはいる。
主人大木蓊は体格のよい四十以上の男で、年輩からいうと、矢野とは叔父甥くらいの差である。文学上の交際から、矢野は大木を先輩として尊敬するほかに、さらに親しい交わりをしている。