Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
矢野は女を呼んで下宿料の前払いを渡し、
「自分はからだが弱いから、時にわがままなことをいうかも知れない。なにぶん頼むよ。」
と愛想をいって、宿へも女にも幾分か心づけをする。書生としては珍しい客だから宿の受けはもちろんよい、火鉢に茶具、比較的下等でないのを取りそろえて貸してくれた。
矢野は思い出したように冷えた茶をすすって、まあよかったとひとりごとをいいつつ、座敷の周囲を見まわしたが、これといっていやなものも目にとまらない。
額は取りのけてもらって、自分の好きな人の写真をかけよう。床の掛け物もこれはよしてもらって、大木さんから子規先生の物を貸りてきてかけよう。こうすべてにきまりがつくとたいへん気分がいい。矢野は日の暮れないうちに机とランプだけは買って来ねばならぬと思っているけれど、出かける気にもならない。大木のいったことを思い出す。君はからだの弱いせいか、ささいな事に拘泥するふうが見える。
「君はなんでも不快を感じそうな物事に接近することを避けるようにせんといかん。」
なるほどそうだやっぱし病気のせいだろう。かまうことはない、なんでもこれから、のろくのろく平気に平気にやってみよう。