Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
兄夫婦ももう当代の人達ではないのだ。
自分は今もうとうこの村へ帰りたいなどいう考えはないが、自然にも不自然にも変わり果てた、この小村に今さら自分などをいるる余地のないのを寂しく感じずにはおられないのであろう。自分は今そういう明らかな意識をたどって寂しくなったのではない。ただ無性に弱くなった気持ちが、ふと空虚になった胸に押し重なって、疲れと空腹とを一度に迎えたような状態なのだ。
「こりゃおかしい、なぜこんなにいやな気持ちになったんだろう。」こう考えて自分は立ちどまってしまった。そうして胸の鼓動を静めようと考えたわけでもないが、ステッキを両手に突き立て胸を張って深い呼吸をいくたびかついた。
十年前父は八十五でなくなられた。その永眠の時には法華経を読んでいて、声の止んだのを居睡りかと家人にあやまられたと聞いて、ただありがたいことと思ったのみ、これでふたりとも親が亡くなったのだなとは考えながら、かくべつ寂しいとも思わなかった。
自分は親のない寂しさも、きょうこの村へはいりかけて、はじめて深刻に感じたのだ。
「いやこりゃ自分が年をとったせいだな。」こうも考えた。